宮沢賢治全集の童話Ⅶの短編で人にとって大切なまことのチカラの出し方が出てきます。
ある時インドのガンヂス河が水が増して激しく流れていました。
それを見ていた群衆の中に尊いアショカ大王もいました。
大王は家来に「誰かこの水をさかさまに流して落ちつかせる事は出来ぬか?」
と問います。家来は皆
「陛下よ、それはとても出来ない事でございます」と答えるばかりです。
それを聞いていた中に1人のいやしい職業の女がいました。彼女は
「わたくしは自分の肉を売って生きているいやしい女です。けれども私のようないやしい者でさえ出来るまことのチカラの大きい事を王様にお目にかけましょう」
と言いながら、まごころをこめて河に祈りだすと、河はたちまちたけりくるって逆さまに流れはじめました。
王様は女にどうしてそのようないやしい者にこんな力があるのかと聞きます。
女は王様にまことのチカラによるものです、と答えます。
お前のように不義でみだらで罪深く暮らしているものにどうしてまことのチカラがあるのか、と尋ねます。
女は説明します。
「王様、私は私を買って下さるお方には、おなじくつかへます。武士族の尊いおかたをも、いやしい方達をも等しくうやまひます。
ひとりをたつとびひとりをいやしみません。王様、このまことの心がガンヂス河をさかさまにながさせたわけでございます」
私は店にとてつもない異臭を放つお客様やとっても横柄なお客様が来られた時は、このまことのちからを使わせていただいております。
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